近年、鯨類研究の進展は目覚ましいものがある。この礎となった近代鯨類学の進展は、英国の王立海洋研究所が創始した 「Discovery Reports」あるいはノルウェーにおける 「Norwegian Whaling Gazette」によるところが大きく、我が国では「The Scientific Reports of the Whales Research Institute」がそれらに匹敵する。
「The Scientific Reports of the Whales Research Institute」は1947年の(財)鯨類研究所開設の翌年に創刊され、広く世界に向けて情報を発信するため、当初より英文にて構成されていた。このことは日本の第二次大戦後の復興期においては、極めて画期的な発刊形態であった。
「The Scientific Reports of the Whales Research Institute」には、創刊以来延べ246人の研究者による419編の科学論文が収録されている。これらの科学論文は広く内外の鯨類研究の発展に貢献したことは衆目の一致するところであり、今日的に言えばImpact Factorおよび引用頻度の極めて高い研究誌であった。しかし、残念ながら「The Scientific Reports of the Whales Research Institute」は母体組織の改変により1988年に第39号をもって廃刊となり、様々な経緯により、新組織である日本鯨類研究所にも継承されなかった。
爾来30年、世界的視野から見れば多くの多様化した鯨類研究誌が存在し、それぞれが独自の観点からユニークな研究情報を発信している。一方、我が国では、嘗ての「The Scientific Reports of the Whales Research Institute」に匹敵する鯨類研究誌は未だ刊行されていない。これは我が国の鯨類研究者の多くが、海外に拠点を置く国際的な研究誌への投稿を目指しているからかもしれない。
しかし、捕鯨問題が国際的に混迷化すると共に、鯨類研究誌の発刊ポリシーにも変化が生じ、論文の採否を調査研究手法によって差別する傾向も見られるようになった。この措置によって、投稿論文の審査を受けられない事態が少なからず生じている。論文作成上動物倫理は強調されてしかるべきであるが、国際法や国内法によっても合法な調査研究の手法による差別化は、科学研究の正当性を逸脱した措置と考えざるを得ない。
我々が計画している新たな鯨類資源研究誌は「The Scientific Reports of the Whales Research Institute」のポリシー、つまり鯨類研究によって人類の福祉への貢献を目指し、動物倫理に合致すれば、調査研究手法による差別を設けない。しかし、特定の研究組織の機関誌として刊行するには、世界情勢はあまりに複雑であり、研究誌としての中立性を維持するため、鯨類資源研究刊行会をベースにした発刊形態をとることとした。新雑誌の名称は「Cetacean Population Studies」とする。広く世界に門戸を開き、鯨類を中心とする海産哺乳類の資源研究の進展と、志ある後進の育成を目指したい。
2017年11月1日
鯨類資源研究刊行会
設立発起人代表 大隅清治
発起人一同
鯨類資源研究刊行会(以下、「刊行会」という)は、ジャーナル「Cetacean Population Studies」を企画、編集、発行することをその目的とする。
「Cetacean Population Studies」は、調査研究手法による差別感をもたない公正な鯨類を主とする海産哺乳類を対象とする査読付き英文学術雑誌を作成・発刊することを目的とする。科学的に妥当であれば、手法的な制限を加えずに、公正な研究論文を掲載公表し、鯨類を主とする海産哺乳類の資源の保全と持続的利用に関する研究の推進と、それらの成果を社会に還元することを目的とする。投稿論文は、これら基本方針の範囲内に関するもののみを受け付ける。①オリジナル研究フルペーパー、②オリジナル研究ショートノート、③フォトギャラリー(説明付)、④研究レビュー、⑥その他鯨類資源研究刊行会が認めたカテゴリーは、当該分野における複数の専門家による査読結果に基づき、見識の高い専門家よりなる編集委員会において、ジャーナルの質を維持し、かつ読者の立場からの読みやすさにも配慮して、公正かつ慎重に掲載論文の選定と編集作業を行う。
刊行会には、代表をおき、全体組織を管掌する。
刊行会は、役員会、編集委員会及び事務局で構成される。役員会は、雑誌刊行にあたる大枠を審議し、方向性を決定する。また、編集委員会は雑誌編集にあたるプロセスを審議しその実務を行い、事務局は雑誌編集・刊行にあたる事務的作業に関する全ての実務を行う。
代表ならびに役員の任期は5年とし、再任を妨げない。
役員会は、代表1名、代表代理1名、常任委員6名で構成され、刊行会会務の執行に責任を持つ。役員の構成は、刊行会において選出するものとし、職域及び専門領域を考慮する。
役員会は、以下の事項を審議し、承認あるいは決定する。
編集委員会は、編集長及び」常任編集委員で構成され、論文内容の専門性によって招聘編集委員を国内外から委嘱することができる。
編集委員会は、以下の事項を審議し、承認あるいは決定する。
事務局は、事務局長及び事務局員で構成され、事務局長のもとに編集・刊行にかかわる以下の事項を扱う。
査読にあたっては、刊行会の基本方針に沿ったもので、本誌に掲載するにふさわしい原稿、すなわち大局的な見地から論文が読者にとって有益か否かによって採否を判定する。
論文投稿者は査読者を複数名推薦することが出来、原則として担当編集者はそのうち1名を選任する。
査読の要領は、「論文査読要項」に従う。
投稿論文と同一あるいは同一グループの著者による以下のいずれかに該当する論文の内容が、編集委員会によって同一と判断された場合には二重投稿とみなし、採録しない。
この会則によらないもの、あるいは不明確な点は、役員会で協議して対処することができる。
会則の変更は役員会で審議され、承認を受けなければならない。